忍者ブログ
日々見たものや思ったことがらをだらだらと
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「UNDEAD」 アートポート 2003 監督:Peter Spierig/Michael Spierig
ゾンビ映画の源流を「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」以前に遡ると、
「地球最後の男」(1964)という映画につき当たります。

世界に謎のウィルスが蔓延し、
それに侵された人は全て夜にしか活動できない吸血鬼と化した世界で、
ただ一人生き延びた男ネヴィルの孤独な戦いを描いたもので、
こちらに登場するのはゾンビではなくあくまで吸血鬼なのですが、
その吸血鬼の描写を始め様々なゾンビ映画的要素の大元が、
すでに揃っているのですね。

怪物化の原因がウィルス感染であったり、
それに対する抗体や血清等にも触れられていたりと、
むしろ後発作品が取り入れてゆく要素がすでにこの段階で揃っている辺り、
「地球最後の男」のネタとしての先進性や普遍性には驚かされます。

そしてもう一つ注目すべき点は、
本当の加害者は誰であったのか?という部分が
物語の核心部分であるという点ですね。

この辺り1971年にリメイクされた「地球最後の男オメガマン」では
劇中ストレートにセリフとして出てきますが、
「この世界から見れば人間であるお前こそが怪物なのだ」と、
主人公のネヴィルは吸血鬼たちに言われてしまうのです。

同様の視点で藤子F先生も「流血鬼」という短編を執筆されていますが、
短いページで「地球最後の男」の要素を凝縮した傑作短編ですので、
興味が湧いた方は是非一読していただきたいです。


さて、前回語らせていただいた話題とつながってくるのですが、
どちら側の目線に立つかで「殺戮者が誰であるか?」
という部分が容易にひっくり返ってしまうという危うさが、
すでにこの古典作品の中で提示されてしまっている訳ですから、
そこに触れる以上避けては通れない命題があることは明白ですし、
諸々判った上であえて踏み込むのであるならば、
さらに「地球最後の男」を越える落とし所を用意しなければなりません。

それはかなり高いハードルではないか?と思います。

故にロメロさんのシリーズはじめ後発のゾンビ映画というジャンルでは、
プライオリティその物を変更した上でドラマを描き、
あえて現象そのものを俯瞰して見る事もしませんし、
それそのものを畳んで終息させる方向に物語が進まないのでしょう。

そのお陰で「ゾンビもの」という固有のジャンルが生まれたのです。

しかし、本当に繰り返し述べさせて頂いている通り、
ゾンビ映画というものはブーム以降から今に至るまで、
途絶える事なく日々量産され続けており、
その間様々な切り口の作品が作られて来ました。

ですからその中には当然、あえて触れないでいた部分に触れる事で
目新しさを見出そうとするものだって出てくる訳です。

今回紹介させていただく「アンデッド」という映画は、
まさしくその一歩を踏み込んだ上に、
なんだか色々と斜めな方向に切り込んだ怪作…
いえ、快作ゾンビ?映画です。
レネさんは実に強いヒロインです
※昨日の映画からの使い回しではありません本作のマリオンさんです
遺産と共に親の借金の支払い義務まで相続してしまい、
借金のカタとして生まれ育った農場を失ったレネは、
失意のまま都会から来た芸能エージェントの男と共に
片田舎のバークレーの街から出てゆくその途中、
近道として通った裏道で車の事故現場に遭遇する。

道を塞ぐように放置された事故車の様子を見に行った
芸能エージェントの男は、何かが落ちてきたらしき穴が
天井にぽっかりと開いた車と、
その助手席に無残な少女の死体を発見して戻ってくる。

が、レネがその報告を聞いた瞬間、
男は何者かに足を掴まれ車の下へと引き込まれていまう。

異変を察して慌てて車外に飛び出すレネに、
奇怪な人喰いの怪物が襲いかかり、
車の下に引き込まれたはずのエージェントの男も、
異様な姿となってレネに襲いかかるべく躙り寄ってきた。

恐怖と混乱に立ち尽くすレネ。

が、その窮地を救った者があった。
かつて宇宙人に誘拐されたと語り、地元でも変人扱いされている
武器屋のマリオンである。

突如降りだした酸性雨の中、レネはマリオンの家へと逃げこむ。

この時すでに異変はバークレーの街中に伝播しており、
多くの人は避難を開始してパニック状態となっていた。

マリオンは静かに言う。
「これは始まりだ…この世の終わりの…」


さて、これが導入部のあらすじな訳ですが、
よくよく見てみると大枠の筋立てとして、
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」をトレースしているのが
判るかと思います。

この後マリオン宅に合流するメンバーとしても、
トラブルメーカーとなる男女二人組、
保安官ハリソンと巡査のモリー、
そして男女カップル(すでに夫婦ですけど)であるウェインとサリアンヌと、
物語を回すキャラ配置も被せてあります。

ただし後者のカップル枠のサリアンヌは妊婦であり、
ウェインはヘリではありませんが飛行機乗りですので、
微妙に「ゾンビ」も混ぜて来ていますね。
ハリソンさんはややこしい感じの人ですが案外事態を掻き回したりはしません
しかし予想に反して立て篭もり劇はわりと序盤であっさり終わり、
逃走劇とこの異常事態の原因究明といった部分へと
焦点が移ってゆきます。

本作の物語としての肝の部分は後者である原因究明部分なのですが、
ここの部分をどう感じるかでおそらくこの「アンデッド」という映画の
評価は二分されてしまうでしょう。

最初にゾンビ?映画と疑問符をつけたのはそれに由来しています。


とはいえ語り口としては間違いなくゾンビ映画の文脈を外してはおらす、
制作側も過去の名作に対してのオマージュを
ふんだんに盛り込んでいますので、
ゾンビ映画として作られているのには間違いありません。

ただ目新しい切り口を求めて色んな要素を盛り付けた結果、
ジャンルとしてはちょっと変なところに
片足を突っ込みかけちゃってる感じになったのでしょうね。


区分としてはおそらく
低予算のインディーズ作品に括られる映画だと思いますが、
ゾンビ等の残酷描写も結構見栄えのする造りになっており、
アクションなども見応えがあってチープさはあまり感じさせません。

その辺りについては安心できるクオリティは終始維持できていますね。

筋立ても先に述べている通りにあれこれ盛っている割には、
大きくとっ散らかってしまう事もなく、
落とし所も上手くまとめているのではないかと思います。

「地球最後の男」のラストの衝撃度ほどではありませんが、
オチとしてもなかなかに捻ってありますしね。

…パッケージが地味に酷いネタバレだったりもしますが。

実に画になるシーンですしキービジュアルに採用したくなるのも
確かにわかりますけど。
実はこの二人の方が事態をややこしい方向に持ってゆく原因だったりします
ただこの映画、
快作ではありますがもう一つ突き抜けた物を感じないのも事実で、
それさえ備えていれば一段上の名作への昇格もあったのではないか?
とかそんな風にも感じます。

全体的にコメディ寄りではあるのですけれど、
突き抜けた良い意味でのバカっぽさがもう一歩というところですので、
そこの辺りの味付けなりがもう一匙加えてあればよかったのではないかと
そんな風に思います。

決してつまらない訳でもなく悪い映画ではないのですよ?
言わばあらゆる部分で卒のない器用貧乏的な印象止まりなんですよね。


さて、この映画もあれこれ盛り付けた結果、
物語の視点が古典名作に近づいた典型みたいな事になっていますが、
やはり過去の名作には色々な原石が眠っているのではないでしょうか?

きっと人が「面白い」と感じる要素というのは、
わりとシンプルで普遍的な物に宿っているのでしょう。

そういう事を再確認させてくれる一作です。

変な映画ではありますが、娯楽作品としてはよく出来ていると思いますし、
あまり中だるみもなく最後まで進むので退屈もしません。

夏の夜のお供に軽いスナック菓子でも摘む気持ちで、
ご覧になってみてはいかがでしょうか?

兎に角一見の価値ある快作であり怪作です。


では今回はこんなところで。
お付き合いありがとうございました。
こういう方向でのサービス精神も抜かりありませんヨ
PR
PREV ←  HOME  → NEXT
Copyright (C) 2019 いまさらなハナシ All Rights Reserved.
Template Design by kaie
忍者ブログ [PR]