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過ぎ去りし日々のそれこれ
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SLIME NO.003
スライム
SLIME

 
大きな魔力が行使された場所、または日常的に頻繁に魔法が使用されるような場所、
もしくは過度に生と死が交錯する場所…そういった場にはある種の”よどみ”が生まれ易い。

 そのネガティブなエネルギーの吹き溜まりは、時として世界の境目を曖昧なものにしてしまう。
つまり、人ならざるものの支配する世界と重なりあう綻びを作り出してしまうのだ。

 当然そこから迷いだしてくるものがある訳だが、
所詮薄布越しに向こう側が透けて見えるような程度の接点である。
完全に境界を抜け出てくる事が叶わず、大概はその存在のほんの上澄みのようなものが、
現世に染みを作るのみで終わってしまう。

つまり、あの命を持った汚物のようなもの、俗にいうスライムと呼ばれているものは、
実体化し損ねた異界の存在の哀れな成れの果てなのだ。

 もっともそれは単独で領域を越えて来る事のできない程度の力しかないという事の現れともいえ、
おおよその場合、魔界や冥界に属する最下級の悪魔や下等生物がその正体なのだろう。

 本来のかたちさえ保つことができず、その不完全な肉体(と呼ぶにも不十分だが)に
引き摺られるかのように知能も意思も失い、
猛烈な食欲という単純な生存欲求の命じるままのみに行動するそれは、
きわめて原始的な原生生物の有り様と変わりないが、
時折必死に何かを形作ろうとするような動きを見せる事もあり、
それが何かしらの意味を見いだせる行動なのか?それとも偶然そう見えるだけの、
意味のない行動に過ぎないのか?さらなる研究が期待される。

 余談であるが、大量の獲物を捕食したり魔力を吸収したスライムは、
それらを触媒とし欠落部分を補い、本来のあるべき肉体を再構築するという一説もあるようだが、
大概のスライムは一定期間が過ぎるとそのゲル状の身体さえ維持する事ができなくなり、
汚らしいあぶくだけを残して蒸発するという末路を遂げる。

生殖機能さえ持たない彼らはそうやって一代限りの儚い生命を終え、
その魂はまた元の世界へと帰ってゆくのだ。

 
 ご覧の通りデザイン的にも解説的にも何の影響を受けてるかと言えば、
判る方には一目瞭然ですね。


 スライムはもともと伝承系のモンスターではありませんので、
その形状やら設定やらが作品ごとに大きく異なるというのが特徴と言えます。

 とりあえずコンピュータRPGにおいては「序盤に出てくる最弱の部類のザコ敵」という部分だけは、
共通認識としてわりと定着しており、なおかつ抜群の認知度を誇りつつも、
ではどんなモンスターなのか?と考えてみる時、意外に不確定な部分が多いというのは
結構ユニークな立ち位置の存在ではないでしょうか?

 スライムの源流を辿るとおそらくSF小説などから取り入れられた物なのだと考えられます。
リザードマンやクアールなどと同じく、近代になってからの創作物から誕生した、
歴史的にはわりと浅いモンスターなのですね。
神話や伝説というバックボーンを持たない為に、創作物としてかなり自由に扱われている…
というのが現状なのでしょう。


 先に挙げた「最弱のザコ敵」としてのイメージというのはさらに近年になってついたもので、
国産RPGにおいてそういう流れを決定づけたのは、間違いなく『ドルアーガの塔』というゲームでしょう。

実際のところ、止まっている状態でなければ剣を出していても触ると即死してしまうという、
わりと厄介な敵ではあるのですが、一面から登場してくるグリーンスライムは
いかにも初歩的な敵キャラ然としており、これが後の運命を決したというところでしょう。

また、スライムといえばあのバケツっぽい容器に入った玩具のアレを想像したりもしますが、
ああいったどろどろとした流動体ではなく、ふるふるとした弾力を持つゼリー状の質感という方向性についても、
やはり『ドルアーガの塔』からの影響が大きいのではないかと思いますし、
現在の国産RPGにおけるスライムのルーツというのは、大凡ここにあると考えて差し支えないでしょう。


 伝承に登場する怪物たちは、自然現象などに本来持ち得ない具体的な姿かたちを人間の持つイマジネーションによって与える事で
誕生してくる訳ですが、形状として具体性を持たない「不定形の怪物」というアイデンティティを与えられているスライムは、
いかにも近代的な怪物と言えるのかも知れません。

そしてまたそれが時代を経る事によって、キャラクターとしての「かたち」が付加され、
より具体的な存在になったりもする訳ですから、これまた面白いものだと思ったりする訳です。


それでは今回はこんなところで。

ありがとうございました。



※モンスターの解説は基本的にaVAshiri独自の解釈によるものですので、
迂闊に他所で披露してしまうと恥をかいてしまう事になるので、十分にご注意ください。
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