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過ぎ去りし日々のそれこれ
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MINOTAUR NO.022
ミノタウロス
MINOTAUR

 神と人の世界がそれほど遠くはなかった時代、その交わりにより多くの英雄や怪物が生み出されたという事は以前にも語った通りであるが、このミノタウロスもまた、そういった中で生み出された大きな過ちの一つである。

神獣と人との交合により誕生した、この半獣の身を持つ異形の者は神の呪いを受けた存在であったが、ある大国の王子として生まれたが故に忌み子として間引かれる事なく育てられた。

しかし受けた呪いの深さ故か、それとも生まれ持った獣性故か、育つにつれて獰猛かつ残虐極まりない性質を増してゆき、父王もついにその抑えの利かない怪物性を持て余すに至ったが、殺してしまうには忍びないと彼を地下へ築いた広大な迷宮へと監禁することにした。

 父に裏切られた怒りはどれほどのものであったか?

ミノタウロスは地下で恐ろしい唸り声を上げ続け、その怒号は大地を激しく揺らし、封じられてもなお国に災いを為すようになってしまった。
困り果てた父王は年に一度、数人の人身御供を我が子のいる迷宮へと送り込み、その怒りを慰める事にした…というのが、この怪物にまつわる伝説の概要である。

 この通り本来ミノタウロスとは、神話の時代に築かれた迷宮へと封じられた牛頭人身の呪われた怪物それのみを指すのであるが、悪趣味な魔術師たちがその伝説に目をつけないはずもなく、実に嘆かわしい事であるが模造品が大量に生み出される事となった。

そう、冒険者の多くが出会うミノタウロスと呼ばれる怪物のほとんどは、そういった伝説の『箔』にあやかった悪質な模造品なのである。

 オーガやハーフオークなどといった体格的に優れた亜人を母体に生み出されたミノタウルス”もどき”たちの知能は、混ぜ込まれた獣性に引き摺られるが故か何れも著しく低いが、全身の筋力はトロールやオーガをも軽くしのぎ、並外れた攻撃性と執念深さを兼ね備えた性質を持つため、扱い方さえ間違えなければ非常に過ぎれた番人としての資質を備えている。

つまりそのオリジンと同じく地下迷宮などに放逐し、勝手に徘徊させてさえおけば滞りなく有能な守護者としての役割を果たしてくれるという訳である。
ただし、この番犬は飼い主の手をもこっ酷く噛み付く駄犬でもあるので、取扱には厳重に注意せねばならない。

 そしてこのように味方としても厄介な怪物が敵として立ちはだかる場合、その何十倍も注意をせねばならない事は言うまでもない。

オーガよりもさらにもう二回りほど上回る巨躯が、獰猛な牡牛そのままの突進力を持って襲い掛かってくる様はまるで火山弾を思わせ、まともにその威力を受けたモノは一瞬にして爆ぜ散り、跡形も残る事がないであろう。

魔術や特殊な能力こそ持たないが、この直線的でも圧倒的な力こそが彼らの最大の武器であり、戦う相手にとっても油断のならない脅威なのである。

このように扱いの難しい怪物故にそれほどあちこちで見かけるものでもないが、地下迷宮の深層が不自然に静かだと感じた時は注意した方がよいであろう。

その階層は彼、ミノタウロスの徘徊するテリトリーである確率が非常に高いのだ。


 さて余談であるが、伝説の上ではミノタウロスは知恵ある勇者に倒された事になっているのだが、件の迷宮だとされる遺跡には未だ謎が多く、深層に潜ったまま戻ってこない冒険者も後を絶たないというが…?


 ここ数回、比較的マイナーなモンスターが続きましたが、今回は有名どころです。

多くのコンピューターRPGにも登場するモンスターですので、その名前を聞けば大概の方がパッと何かしらのイメージを容易に思い浮かべる事ができるのではないでしょうか?

 大きな角のついた牡牛の頭に、均整の取れたマッシブな肉体。
場合によってはそれを支える下半身が、パンパンに筋肉の張ったケモノ脚で、つま先には巨木の切り株を思わせる巨大な蹄が・・・と、実に絵になるモンスターで、大概のゲームでは単なる一介のザコ敵ではなく、それなりに強力なものとして扱われ、場合によっては中ボスクラスの待遇で登場してきたりもします。

元祖地下迷宮の主であり、いわゆるキャッスル・フリーク的モンスターの始祖でもあるというのもポイントなのでしょう。
ネームバリューも相まってゲームの悪役としてはこれ以上にない扱いやすさを持つ存在だと言えます。

 牛の頭を持っているという事が最大の理由なのでしょうが、そのマッチョすぎる外観故に、ただ獰猛なだけの脳筋モンスターとして扱われる事の多いミノタウロスである訳ですが、彼もまた怪物となる前は神であったようで、神話内でもその咆哮で大地を揺るがしたとあるように、地脈などに由来する信仰対象だったのでしょう。
『地下迷宮』という要素もそれを強く匂わせるもので、神としてのミノタウロスの本質は、実はそこにあるとも言えるかも知れません。

おそらくはそれを鎮めるための土着的な人身御供の儀式が、神話へと取り込まれる際に「地下迷宮に潜む野蛮な人喰いの怪物」の物語として再編されたのではないでしょうか?

近代に近づくにつれ、人>獣という価値観が一般化し、獣の要素を含むという事は蔑まれるべきものとして扱われるようになってゆきますが、古代信仰においては人より優れた働きをするものとして、獣そのものが神性視されたり、また半人半獣というのも、人に+αの要素を備えた超越的存在であるという認識をされている場合も多く見られ、ミノタウロスもおそらくはそういった人を越えた存在だったのでしょう。

この手の怪物化された神の多くに当てはまる事なのですが、その誕生譚からしての蔑まれぶりからも、かなり有力な神であった事が窺い知れる気がします。

 ちなみにこのミノタウロスは海の神ポセイドンとの関わりが深い怪物なのですが、日本国内にも牛の頭を持つ牛鬼という海の妖怪がおり、それをお奉りする地方まであったりします。
 また、河童などといった穢神の元締めとも言われる牛頭天王という名の神様がいたり、そういった海神、水神というったものと牛頭の神との関わりを紐解いてゆくと何か面白いものが見えてくるかも知れませんね。


それでは今回はこんなところで。

ありがとうございました。


※モンスターの解説は基本的にaVAshiri独自の解釈によるものですので、
迂闊に他所で披露してしまうと恥をかいてしまう事になるので、十分にご注意ください。

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